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    また、「便所をきれいにすると、きれいな子供をさずかる」というのも

    全国的にみられる俗信だが、これには、便所神を大事にせよという教えと

    便所はきれいに使わなければならないという実用的な戒めが混在している

    実際問題としても、昔の便所は、老人や病人にとって

    大変危険な場所であった

    昔の便所はひどく寒い場所であり、これが心臓によくない

    便所で心臓発作を起こす人も多かったのだ

    そのうえ、たいていの家では便所は屋敷から遠く離れた場所に

    設けられていたため、便所で倒れると声をあげても

    家族に伝わりにくい

    そのまま命を落としてしまう可能性が高かったのだ

    また、大便をするために力むのも体にはよくない

    余計な力が体に加わり、血圧があがる

    今でも、とくに和式便所で脳血管障害を起こすことはよくある

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    「北を枕にして寝るな」というが

    この迷信は、仏教的な考え方から生まれたものだ

    「大般涅槃経」によると、お釈迦様が亡くなられたときの

    かっこうは、「頭を北方に枕し、足を南方に指す」というものだった

    ここから、北枕は縁起が悪いと考えられるようになった

    また、古代中国以来、東南アジアでは

    北斗七星信仰とからんで、死者を北枕にして葬る風習があった

    これも混合して、北枕はさらに嫌うようになったようだ

    もう一つ、嫌われてきた方角は、「鬼門」

    つまり北東の方角である

    現代でも、家相や風水をみるときには

    「鬼門」は中心になる考え方で

    とくに「鬼門の方角には便所を建てない」事が多い

    こちらは仏教ではなく、中国の気学からきた考え方で

    気学では北の方向は陰のきわまる方角

    一方、東は太陽の昇る陽気の生まれる方角と考える

    その間である北の方向は陰と陽、二つの気が正面衝突する

    「相克」の方角であり、そこから悪神が侵入しやすいというのである

    また、北東は、中国にとっては

    北方の遊牧騎馬民族が侵入してくる方角でもあった

    そのことから、この方角を忌むようになったともいわれる

    「朝、出かけに靴のひもが切れると、よくないことがある」

    という有名な迷信も、じつは葬式と関係したものだ

    この俗信は、明治になって、日本人が靴をはくようになるのと

    ほぼ同時に生まれたが、背景には同趣旨の俗信が

    ひろく伝わっていたことがある

    「出がけに、ぞうりの鼻緒が切れると、よくないことがある」

    「ぞうり」を「わらじ」に変えた俗信もあった

    かつて、葬列の際に履いたわらじやぞうりは、

    埋葬がすむと、帰り道、墓場の出口で捨ててくるものだった

    このとき、魔物などが拾って使わないように

    鼻緒を切ってから捨てた

    こういう風習から連想されて

    「朝、出がけに靴のひもが切れると、よくないことがある」

    ということになった

    葬式に出席し、自宅に帰ったときは

    「清め塩」をまくという習慣は

    現在でも広くおこなわれている

    自宅に入る前に、塩を肩にかけ、身を清めるのだが

    これは死者の穢れを塩の力によって払おうというものだ

    そもそも古代は、海水を浴びることで身を清めたもので

    海辺の地域では、「葬式の後は、海水で手を洗う」と

    言い伝えられていた

    それが普通の場所では、やがて海水が塩に変わってきたわけだ

     
    現代でも、相撲では取組の前に土俵に清めの塩をまくが

    塩には塩漬けにするように腐敗を防ぐ力がある

    そんなところから塩に特別なものを感じ

    清めの道具として使うようになったのである

    「嫌な客が帰ったあとは、塩をまく」というのも

    穢れを払うための儀式と言える

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