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    「道で葬列に出会ったら、親指を隠せ」も

    昔はよくいわれた迷信で、今でもお年寄りには

    街で霊柩車を見かけると、親指を握りしめる人がいる

    死んだばかりの人間の魂は、まだ成仏できないまま

    そのあたりに漂っている

    そして、スキあらば生きている人を一緒に黄泉の世界へ

    連れていこうとする

    あるいは、生きている人間の身体の中に入り込もうとする

    それらの霊の干渉を断つためには

    親指を隠せばいいというのだ

     
    なぜ親指を隠すのだろうか?

     
    これは、親指を隠すと、こぶしを握りしめることになるからで

    それは人間の「気」を充実させるポーズなのだ

    死者の霊から生きた身を防衛するため

    こぶしを握りしめ、精気を高めるのだ

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    「人に砂をかけると、身体がグニャグニャになる」という

    奇妙な呪術も、かつては広く知られていた

    公園や運動場の砂場で、友達に砂をかけても

    相手の身体がギュニャリとしおれることは

    なかったと思うが、ここでいう「砂」は

    ただの砂ではなく、特別な作られかたをしたものだった

    真言宗の秘法に「土砂加持」というものがある

    渓流などで採取した土砂をさらによく洗い

    これを本尊の前に置き、光明真言をとなえながら加持をする秘法だ

    こうすると、しだいに土砂に不思議な力が蓄えられていき

    その砂を病気の者に授けると、たちまち病の苦悩から救われる

    また、墓の上にまけば、往生できなかった者も

    往生できるようになるといわれた

    ところが、時を経るにしたがって、この砂の力が過って伝えられた

    まう「その砂をかけると、数日たっても硬直しない」

    つまり死後硬直が起きないとなり、さらにそれが誤伝して、

    生きている人間にかけると、グニャグニャの

    骨なしのような状態になるといわれるようになった

    この迷信の世界ならではの、すさまじい誤解

    きっと真言宗の開祖空海も嘆いていることだろう

    霊魂に関して、最もよく知られた呪術は、わら人形に関するものだろう

    これは霊魂信仰の悪しき変形ともいえ、本来形を持たない霊魂を

    わら人形に乗りうつらせ、それを攻撃することで

    相手を呪おうというものだった

    「わら人形を栗の木にさかさに縛り、釘を打っておくと相手が早く死ぬ」

    「わら人形に五寸釘を打ち、相手の寝室の縁の下に投げ込んでおく」

    などというが、最も一般的な方法は

    「神社の境内の神木にわら人形を縛り、21日間、

    だれにも見られないように五寸釘を打つ」というものだった

    その時刻は、「丑の刻」(午前2時ごろ)が最も効果があるとされ

    その行為を他人に見られると効果がなくなると言われた

    この方法、昔は実際にもよくおこなわれていたようで

    木材商たちは神社の境内から

    切り出された樹木を扱うことを嫌ったという

    樹木の思わぬ場所に金釘が埋まっていて、のこぎりなどを

    傷めることが多かったからだという
     
    ちなみに現在の法律では、これらの行為はいわゆる

    「不能犯」に当たり、それだけでは犯罪を構成しないといわれる

    だが実際には、かつて痴情に我を失った女性が、

    恋敵を呪い、検挙された例もあり、

    行き過ぎれば「脅迫罪」になりかねない

    江戸時代の終わり、霊魂を抜き取ってしまうという

    世にも恐ろしい器械が日本にも登場した

    写真機である

    日本に初めて写真館ができたのは、文久2年(1862年)にことで

    場所は外国と交流のあった長崎であった

    しかし、いかにハイカラな長﨑の人でも

    なかなか写真館に足をはこぼうとはしなかったという

    「写真を撮ると、魂が奪われる」という迷信がささやかれていたためだ

    この話からも、日本人の霊魂信仰がいかに篤いものであったかが

    よくわかるだろう

    その後、写真にめぐる俗言には、いくつかのバリエーションが生まれ

    とくに「3人で写真を撮った場合、真ん中の人が危ない」という

    迷信が全国的に広がっていった

    そのため、明治時代には、客が3人の場合は、用意した

    人形を客に抱かせ、4人にするという

    サービスを用意した写真館もあったという

    その後も、この迷信は根強く残り続け、昭和になっても

    「3人で写真は撮るものではない」といわれつづけた

    もちろん何の根拠もない迷信なのだが

    今でも年配の人には気にする人がいるようだ

    そう思われたのは、当時の写真機の性能にも原因の1つがあったようだ

    昔のカメラでは、3人で写真を撮ろうとすると、

    ピントを真ん中の人にしか合わせることができなかった

    当然、真ん中の人がいちばんはっきりと写ったわけで

    はっきりと撮られる分、魂も盗まれると考えられたのだ

    また、この俗信には「3」とう数字が「凶数」と考えられたことも

    少なからず影響していると考えられる

    現実問題としては、3人で写真を撮るときは、真ん中に年長者が

    くることが多かったはずで、確率的にいって早く亡くなることが多かったのだろう

    おそらく、そんな事実が積み重なったのではないだろうか

    実際に、真ん中に写った人が死ぬことが多かったため

    この迷信は長く信憑性を持って語り継がれることになったのだろう

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